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涙が止まらない!~涙道閉塞症の原因と治療法~【医師監修記事】

「涙が止まらない…」そんなお悩みありませんか?

「いつも目が潤んでいて視界がぼやける」「寒い日に外に出ると涙がポロポロこぼれる」「目やにが増えて朝目が開けにくい」「マスクやメガネが曇って困る」など

こうした“涙が止まらない”症状に悩んでいる方は多くいらっしゃいます。

多くの人が「年齢のせいかな」「ドライアイかも」「花粉症かもしれない」と考え、我慢してしまいがちですが、実はこのような症状には、「涙道閉塞症」という病気が潜んでいる場合があります。

この記事では、涙道閉塞症の原因やメカニズム、他の病気との違い、検査法や治療法までを専門医の視点からわかりやすく解説します。

涙が止まらない原因はひとつじゃない!主な原因を紹介

まず知っておきたいのは、涙があふれる原因が必ずしも涙が出すぎているとは限らないということです。ほかの原因としては、涙の通り道(涙道)の流れが悪くなっていたり、瞼や目の表面の異常のせいで涙がこぼれやすくなっている可能性が考えられます。

以下に代表的な病気を紹介します。

ドライアイ

涙の量が減る、または質が悪くなることで目の表面が乾きやすくなり、それを補おうとして反射的に涙があふれる現象が起こります。「乾いているのに涙が出る」ということに違和感があるかもしれませんが、涙の質が悪いせいでたくさんの涙が出てしまいます。

結膜炎(アレルギー・ウイルス・細菌性)

目の炎症によって涙の分泌が促され、同時に目やにやかゆみ、充血なども見られます。

眼瞼内反・外反(まぶたの向きの異常)

まぶたの変形により、涙の排出が妨げられたり、角膜が刺激されて涙が増える場合があります。

涙道閉塞症

涙道が閉塞することで涙が溢れてしまいます。この病気については次に詳しく解説します。

涙道閉塞症とは?〜涙の通り道が詰まってしまう

涙は、目尻の上にある涙腺で分泌され、まばたきによって目の表面に広がり、その後、目頭にある涙点という小さな穴に流れていきます。

涙点から入った涙は、涙小管 → 涙嚢 → 鼻涙管、という経路で最終的には鼻の奥へと排出されます。この経路のことをまとめて涙道と呼びます。

この涙道のどこかが狭くなったり、完全に詰まってしまうことで、涙が行き場を失い、目頭からあふれ出てしまう状態が「涙道閉塞症」です。

涙道閉塞症の主な原因

加齢にともなう変性

最も多い原因は加齢です。年齢とともに粘膜が硬くなったり、慢性的な炎症を起こしやすくなり、涙道が狭くなったり閉塞したりします。特に60代以降の女性に多くみられます。

構造の違い

女性の鼻涙管は男性よりも細く、もともと詰まりやすい傾向があります。そのため、女性の方が涙道閉塞症を起こしやすいのです。

炎症や感染症

副鼻腔炎や慢性結膜炎などの炎症が涙道に影響し、閉塞を引き起こすこともあります。

手術や外傷の影響

顔のけがや、目・鼻の手術の後に癒着や損傷で涙道がふさがってしまうこともあります。

薬剤性・放射線治療など

抗がん剤や放射線治療によって、涙道が炎症を起こして閉塞するケースも報告されています。

涙道閉塞症の診断に必要な検査

  • 通水検査

涙点から細い管を挿入し、生理食塩水を注入して、涙道の通り具合を確認します。
鼻に水が流れれば正常、逆流したり途中で止まれば閉塞と判断されます。

■ 涙道造影検査

造影剤を涙道に注入し、X線撮影を行って、閉塞部位や程度を詳しく確認します。

■ CT・MRI

複雑な閉塞が疑われる場合には、より精密な検査を追加することがあります。特に腫瘍が原因で涙道閉塞症が起こる場合があるので注意が必要です。

治療法:涙道の通りを取り戻すには?

涙道洗浄・ブジー処置

軽度であれば、生理食塩水を用いた洗浄や、ブジーと呼ばれる細いワイヤーを挿入して通り道を広げることで改善することもあります。

シリコンチューブ挿入

涙道に柔らかいシリコンチューブを数ヶ月間挿入し、閉塞を防ぐ方法です。局所麻酔で行えることが多く、日帰り処置で対応可能な場合もあります。

涙嚢鼻腔吻合術

完全に閉塞している場合や、炎症を繰り返す場合には、涙嚢と鼻腔を直接つなぐ再建手術が必要です。

手術は局所麻酔または全身麻酔で行われ、所要時間は1〜2時間程度。日帰りまたは1泊入院で可能な施設もあります。

治療後の経過と生活の注意点

・チューブ挿入後は、違和感があるものの、日常生活に大きな支障はありません。

・術後は点眼薬や内服薬を使いながら、定期的に経過を確認します。

・チューブは通常数ヶ月留置した後で抜去します。

・強く目をこすったり、鼻を勢いよくかむことは控えるよう指導されることがあります。

また、手術後に涙が出なくなるわけではなく、本来の自然な涙の流れが戻ることで、快適な目の状態を取り戻せます。

よくある質問(Q&A)

Q1:何歳まで手術を受けられますか?
A:体力や全身状態によりますが、80代〜90代の方でも問題なく手術を受けている例は多くあります。

Q2:放っておくとどうなる?
A:涙嚢に膿がたまって炎症を起こす涙嚢炎になると、痛み・発熱・膿の排出など重い症状が出ます。
場合によっては点滴や緊急手術が必要になることもありますので、それを予防するためにも手術が必要な場合があります。

Q3:再発することはありますか?
A:手術を行っても再発することがあります。術後のケアを怠ると再狭窄する可能性もあるため、定期的な受診が大切です。

まとめ:涙道閉塞症は、正しく診断し、治療すれば治る病気です

涙が止まらない、目やにが増える、視界がぼやける——
その悩み、「我慢するしかない」と思わずに、眼科専門医に相談してみてください。

涙道閉塞症は、涙の排水がうまくいかない構造上の問題であり、適切な診断と治療によって高い確率で改善します。

加齢や体質のせいと諦める前に、一度しっかりと調べてみましょう。目の不快感がなくなるだけで、生活の質はぐっと上がります。
あなたの大切な「視界」を、正しい知識と医療で守りましょう。

【監修者情報】

⽒名:山口 雄大
所属:サークル帝塚山眼科 院長
専⾨:角膜感染症、神経眼科

日本眼科学会認定眼科専門医。
和歌山県立医科大学、済生会有田病院にて勤務。
2023年7月、サークル帝塚山眼科を開設し、院長として診療を行う。
眼科医のための情報サイト「眼科医ぐちょぽいのオンライン勉強会」を運営。
日本眼科学会、日本眼科医会、眼感染症学会、神経眼科学会に所属。

最後に. オンライン診療という選択肢も

目の症状があるとき、「病院に行く時間がない」「すぐには予約が取れない」と感じる方も多いでしょう。そんなときは、スマホやパソコンから気軽に相談できるオンライン眼科診療を活用するのも一つの方法です。

眼科オンライン診療を行う「てのひら眼科」では、症状の写真と事前問診をもとに、眼科医が目の状態を確認し、必要に応じて処方や対処法を提案してくれます。自宅からスマホ一つで眼科医の診察を受けられるため、安心です。

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