てのひら眼科　Magazine

サングラス選び、色で決めていませんか？眼科医が教える「本当に目を守る」レンズの選び方

日差しが強い日、ファッションアイテムとして、また眩しさを和らげるためにサングラスを使っている方は多いでしょう。しかし、そのサングラス、「レンズの色が濃いから安心」「ブランドものだから大丈夫」と感覚で選んではいませんか？ もし、目を守るための重要な基準を知らずに選んでいるとしたら、そのサングラスは眩しさを防げても、目にとって有害な「紫外線（UV）」を防ぎきれていないかもしれません。 それどころか、選び方によっては、かえって目に取り込む紫外線を増やしてしまう危険性さえあるのです。 この記事では、眼科医の視点から、ファッションとしてだけでなく、生涯にわたる目の健康を守るために本当に必要な「サングラスの選び方」について、決定的なポイントを解説します。

最大の落とし穴：

「色の濃さ」と「UVカット性能」は別物 多くの方が誤解している最大のポイントがここです。「レンズの色が濃いほど、紫外線を防ぐ力も強い」というのは間違いです。 紫外線をカットする性能は、レンズの色ではなく、レンズの素材そのものや、表面に施されたUVカットコーティングによって決まります。 透明なレンズでもUVカット性能が完璧なものもあれば、真っ黒に見えるレンズでもUVカット機能が全くないもの（主に安価なファッションサングラスなど）も存在します。

なぜ「UVカット機能のない濃いサングラス」は危険なのか？ 

ここが最も重要な点です。UVカット機能がない、単に色が濃いだけのサングラスをかけると、どうなるでしょうか。

1. 目は「暗くなった」と認識し、光をより多く取り込もうとして、瞳孔（ひとみ）が通常よりも大きく開きます。
2. 瞳孔が大きく開いた状態のところに、防ぎきれていない紫外線が大量に流れ込んできます。
3. 結果として、裸眼でいる時よりも多くの紫外線を目の奥まで取り込んでしまう、という最悪の事態を招くのです。

【ポイント１】「紫外線（UV）カット率」の表示を必ず確認する 

では、何を見て選べばいいのでしょうか。最も重要なのは、レンズの性能を示す数値です。サングラスを購入する際は、必ずタグや商品説明に以下の記載があるかを確認してください。

• 「紫外線（UV）カット率99.9%以上」：最も信頼できる基準です。
• 「UV400」：これは、波長400ナノメートルまでの紫外線をカットできることを示しており、地上に届くほぼ全ての紫外線（UVA・UVB）を防げることを意味します。

これらの表示があるものを選べば、レンズの色が透明に近くても、目はしっかりと守られています。

【ポイント２】レンズの色は「目的に合わせて」選ぶ 

UVカット機能があることを前提とした上で、レンズの色は「眩しさをどれだけ防ぎたいか」で選びます。色の濃さの目安は「可視光線透過率」という数値で示されます。

• 可視光線透過率が低い（色が濃い）： 日中の強い日差しや、ビーチなど照り返しが強い場所に適しています。ただし、暗すぎるとトンネル内などで危険なため、運転用は注意が必要です。
• 可視光線透過率が高い（色が薄い）： 曇りの日や夕方、日常使いに適しています。眩しさは適度に抑えつつ、視界が自然に見えます。

▼レンズの色と機能についてもっと詳しく 

レンズの色によって、眩しさの感じ方だけでなく、景色の見え方（コントラスト）も変わってきます。例えば、ゴルフでは芝生が見やすいブラウン系、運転では信号が見やすいグレー系が推奨されるなど、シーンごとのおすすめがあります。詳しくは「てのひらマガジン」の[サングラスの色で効果が変わる？]の記事でも解説していますので、参考にしてみてください。

【ポイント３】レンズの大きさやフレームの形状も重要 

紫外線は、レンズの正面からだけでなく、上下や横からも侵入してきます。特に、レンズと顔の間に隙間ができやすい形状のものは、そこから紫外線が入り込み、目の中に届くことが分かっています。 できるだけ、以下の点を意識して選びましょう。

• レンズの面積が大きいもの
• 顔のカーブに沿っていて、隙間ができにくいフレーム（スポーツタイプなど）
• 横からの光を防ぐ「フード」がついているもの

まとめ：

正しい知識で、生涯の「見える」を守る投資を 紫外線が目や肌に与えるダメージは、日々蓄積されていきます。その蓄積が、将来の白内障や翼状片、加齢黄斑変性といった深刻な目の病気のリスクを高めることが、多くの研究で指摘されています。 サングラスは、単なるファッションアイテムではありません。それは、あなたの未来の「見える」を守るための「身を守る道具」であり「投資」です。 価格やブランド、色の濃さだけで判断せず、「UVカット率」という正しい基準を持って、ご自身の目を守るための一本を選んでください。